『ニッポンノナツ』

縁側を滑り、障子を撫で、畳に染み込む翠
手足を縫い付けて、暮れ急ぐ

薄暗く潜むセミの抜け殻
その目が黒々としていることにギョッとした
おっかないなあ おっかないなあ
得体の知れなさは
きっと隕石が送り込んだ異星人スパイだからだ

「ワレワレハ ウチュウジンダ」
「ワレワレモ ウチュウジンダ」

誰のものでもない、使い古しの夏が

鍋の底で、焦げ付いた。


photo by「けい」様
2020.08.29