『美しき孤独』

穏やかな日常は36度。
幸福に希釈されるわたし。
暖かいといえば聞こえの良い、生ぬるさ。

わたしは、あなたに愛された。
わたしは、わたし達に、ころされた。

一人きりでささくれだっていたあの頃は
きっと、薔薇よりも美しい棘だったと思う。

冬の夜空の様に、澄み、冴え渡り
春のマグマの様に、渦巻くいのち。

芽吹き花開くものは
事実を上回る真実のフィクション。
鮮やかに彩られた、豊かな孤独。

混じり気のない
どこまでも濃い、透明。
あれこそが私だった。本当の私だった。

今はもう、くすんで鈍って
曖昧なニュアンスに沈む、わたし。

寂しさはとっておきの贅沢だと、知る。


photo by「あきP」様
2020.10.18