『尊し春』

その強かさ故に
簡単に摘まれてしまう
タンポポの花。

同じものは一つとしてないのに
惜しまれることなく
踏みつぶされる。

罪なき小さな手に
弄ばれる。

だからこそ
白い白い綿帽子には
祝福の口づけを。

慈しむように寄せた唇が

触れる直前の、別離。

風に乗って、飛んでいった
小さな小さな、尊い春。


photo by「ニコン元気」様
2021.03.25