『流転』

流るる、流るる、流転のうつしよ。

今散った花は、もう死んだ亡骸。
去年の春に戻っても
来年の春まで駆けても
もう出会えない、春。

なのに
そんな限られた一瞬の中にいる
誰も彼も私もが
異なるあの日の桜を想う。

流るる、流るる、無常のことわり。
心残りの縁だけが
私を私に、つなぎとめていた。


photo by「Ken」様
2021.03.27