『雨天の人魚』

はじまりも終わりも見失う
夜明けとも日暮れともつかない空。

薄暗い灰青の雨空を見上げて
陰鬱な湿度に干からびる。

息苦しい。酸素が足りない。
無言の喉から、エラが突き出る。

そして、私は魚になった。

もうどんなに冷たい水の中でも
うまく流されてゆけるけれど

いずれ、泡になる運命。


photo by「せんきち」様
2021.10.31