『死にきれないセミ』
落ち葉の裏で、セミが鳴いた。
夏の名残りを
六本足の間に隠し持ち
まだ半袖の子供たちに
無遠慮に乱暴に、拾い上げられる。
湿った雪の影で、セミが鳴いた。
眩い反射はあの日の陽炎。
終わった夏が
くすぶり、くすぶり
炭になるばかりで、凍えていく。
セミが鳴く。セミが鳴く。
中身の詰まった抜け殻で
セミがいつまでも、なき続ける。
桜の吹く頃、息絶えた。
photo by「イシモトナオ」様
2021.11.27